建設キャリアアップシステムは、申請や導入にあたって難しそうに見えますが、建設事業者・技能者双方にメリットのある登録制度となっています。
建設キャリアアップシステムの登録は、現時点では義務化はされていませんが、事業者によっては必ず登録をしておいたほうが良い場合もあります。
ここでは、建設キャリアアップシステムに登録すべき理由やメリット・デメリットについて解説していきます。
建設キャリアアップシステムに登録すべき理由
大手ゼネコンからの工事が受注できなくなる可能性があります。
大手ゼネコンでは、下請事業者を含めて、現場に入場する事業者・技能者の建設キャリアアップシステムの登録率100%を目指しています。
ゼネコンは現在、工事を発注する下請事業者へ、建設キャリアップシステムの登録の確認や登録の要請をしています。
今後は、下請け先の選定を建設キャリアアップシステムの登録事業者を優先的に行うなどの流れとなっていくでしょう。
外国人技能実習生の新規の雇用ができなくなります。
国土交通省は建設分野の「外国人技能実習生」の受入れについて、下記事項を義務化しています。
- 雇用先の事業者が建設業許可を取得していること
- 雇用先の事業者が建設キャリアアップシステムに登録していること
- 雇用する外国人技能実習生を建設キャリアアップシステムに登録すること
建設事業者のメリット
経営審査事項の加点対象となります。
建設キャリアップシステムにおいて、次の要件を満たす技能者が所属している場合、技術職員数(Z )評点に加点されることになっています。(令和2年4月1日から開始)
- 国土交通大臣が認定した建設技能者の能力評価基準によりレベル4と判定された者について、「登録基幹技能者」同等のレベルとして評価し、3点の評点を付与する。
<考え方>
技術職員区分「基幹技能者」(評点3点)は、登録基幹技能者を対象。建設技能者の能力評価基準においては、登録基幹技能者をレベル4として判定しており、これと同等の技能を有すると判定されたレベル4の建設技能者を評点3点として評価。(レベル4として、登録基幹技能者、優秀施工者国土交通大臣顕彰受賞者(建設マスター)、卓越した技能者(現代の名工)、安全優良職長厚生労働大臣顕彰受賞者 等) - 国土交通大臣が認定した建設技能者の能力評価基準によりレベル3と判定された者について、「技能士1級」同等のレベルとして評価し、2点の評点を付与する。
<考え方>
技術職員区分「2級技術者」(評点2点)は、技能士1級を対象。建設技能者の能力評価基準においては、レベル3として技能士1級の資格を求めているものが太宗であることから、これと同等の技能を有すると判定されたレベル3の建設技能者を評点2点として評価。
入札参加資格の加点対象となります。
入札参加資格申請において、建設キャリアアップシステムへの登録が加点対象とする自治体も増えています。
公共工事を多く受注している事業者にとっては、利用することの大きなメリットとなることと思われます。
建設キャリアップシステム対応現場としてのアピール
建設キャリアップシステムに対応している事業所として、技能者、発注者、取引先、元請事業者などにアピールすることができます。
従業員の資格や経歴。会社の規模なども簡単に確認できるため、自社の施工能力や技術職員の能力について、積極的な販促物として活用することができます。
業務負担の軽減
ICカードによる勤怠管理の明確化、スキルの見える化による採用の効率化、工事完了後にも入退場情報が確認できるトレーサビリティやコンプライアンスの確保など、建設事業者の業務負担軽減が見込めます。
また、建退協の退職金に関わる事務作業についても効率化されることになります。
技能者のメリット
正当な賃金や処遇を受けることができる
個人カードに保有資格や就業履歴をデータとして蓄積することで、建設業の技能者の経験やスキルが客観的に確認できるようになり、適正な賃金や処遇改善につながります。
- 【経験】→「就業日数」」で証明できる
- 【知識・技能】→「保有資格」で証明できる
- 【マネジメント能力】→「登録基幹技能者講習の受講歴」「職長経験」で証明できる
建退協退職金が適切に受け取れる
ICカード読み取りにより、就業実績が明確に管理されるため、建退協の退職金に関わる事務手続きが円滑になります。
共済手帳に貼り付ける証紙の枚数を明確に確認できるため、適切な退職金が受け取ることが可能です。
建設キャリアアップシステムのデメリット
デメリットとしては、費用面での負担となっています。
事業者登録には、登録手数料の支払いと5年ごとの更新手続きが必要となります。
登録手数料は、事業者の規模によって、変動します。
また、管理者ID利用料として、事業者は毎年11,400円の負担も必要となります。
資本金 | 料金(円) |
---|---|
1人親方 | 0 |
個人事業主 | 6,000 |
500万円未満 | 6,000 |
500 万円以上 1,000 万円未満 | 12,000 |
1,000 万円以上 2,000 万円未満 | 24,000 |
2,000 万円以上 5,000 万円未満 | 48,000 |
5,000 万円以上 1 億円未満 | 60,000 |
1 億円以上 3 億円未満 | 120,000 |
3 億円以上 10 億円未満 | 240,000 |
10 億円以上 50 億円未満 | 480,000 |
50 億円以上 100 億円未満 | 600,000 |
100 億円以上 500 億円未満 | 1,200,000 |
500 億円以上 | 2,400,000 |
建設キャリアアップシステムの申請方法
建設キャリアアップシステムの申請方法は「建設事業者による申請」と「技能者による申請」の2つのパターンがあります。
事業者による申請
- インターネット申請、郵送申請、窓口申請の3つの方法から選択し、申請に必要な情報を送ります。
- 登録料の支払い
事業者の資本金によって異なる登録料(5年更新)が発生します。
その他に、全事業者共通の管理者ID利用料、元請事業者(現場を登録する事業者)が負担する現場利用料がかかります。 - 事業者IDが発行され、登録が完了します。
技能者による申請
- インターネット申請、郵送申請、窓口申請の3つの方法から選択し、申請に必要な情報を送ります。
- 登録料の支払い
技能者の登録は10年更新で、インターネット申請の場合、簡易登録2,500円、詳細登録4,900円です。 - 技能者ID、キャリアアップカードが発行され、登録が完了します。
建設キャリアップシステムのよくある質問
Q1 建設キャリアアップシステムを利用料金はいくらですか?
システムを利用する為に必須となる事業者登録には、登録料を支払う必要があり、5年に一度更新の度に支払いが必要です。
登録料は、事業者の規模に応じて、6,000円から240万円までと非常に幅があります。
資本金規模の大きい事業者であればあるほど、登録料の負担は大きくなります。
また、登録料以外にも、管理者ID利用料11,400円を事業者は毎年支払う必要があります。
Q2 技能者登録の際の利用料金はいくらですか?
技能者者登録の登録料は、インターネット申請の場合で2,500円(詳細登録の場合は、4,900円)です。
Q3 建設キャリアップシステム登録は義務ですか?
建設キャリアアップシステムへの登録は任意とされており、義務化されていません。
Q4 建設キャリアアップシステムは代行申請できますか?
代行申請が可能です。
技能者が所属する事業者のほか元請事業者や、上位下請事業者などが代行申請を行うことができます。
行政書士などが依頼を受けて申請をサポートする場合は、事業者としての立場での登録サポートとなります。
※システムへのログインなどは事業者としてログインすることになります。
代行申請による技能者情報の登録は3パターンで可能です。
- インターネット申請
建設キャリアアップシステムホームページからの登録申請 - 郵送申請
登録申請書を郵送 - 窓口申請
登録申請書を直接窓口に持参
建設業許可についてのお問い合せ
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その他の許認可申請について
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